◆研究への思い

中島が大事にしていることは「自分が面白い、意味があると思ったテーマについて、周りの人からもそのように思ってもらえるような研究をする」ことです。これからも大事にしていこうと思っていますし、所属する研究室のメンバーにも同じことを伝えています。

 

 

 

健康を大切に研究を進めてほしいとも思っています。研究にやりがいや意義を感じるためにも、健康でいることが必要です。ラボメンバーには「健康第一」と繰り返し伝えています。 

 

◆研究テーマ

「人は環境に対してどのような影響を及ぼし、環境からどのような影響を受けるのか」、それを追究したいと考えています。そのために「自己ー対人ー集団ー社会の重層性についての心理学的検討」を続けています。なお、ここでの環境には周囲の他者も含まれます。

 

主な研究テーマは以下の3つです。その他、最近の研究プロジェクトはGrantsに記載していますので、そちらをご確認ください。

 

ただし、中島がひとりで進めている研究はありません。いまはラボメンバーの研究を下支えすることにやりがいを感じています。いろんなテーマに関心のあるメンバーが集まることによって、思いもよらなかった新しい着想があり,研究が展開できると信じています。

  

 

 ◎集団アイデンティティの重層的な変動メカニズム 

 学部生時代から行っている研究です。集団アイデンティティとは、自身が所属する集団の一員としてのアイデンティティです。「I identify with my group ( or category)」の程度と言えます。中島は、個人ー対人ー集団ー社会ー文化レベルの要因の相互影響過程の観点から集団アイデンティティの変動を捉える「重層的アプローチ」を用いた研究を行っています。主に文化的自己観、課題/対人関連ストレス、所属集団に付与された社会的価値といった要因に着目した検討を行い、人が自己を安定的かつ適応的に維持するための手段として集団アイデンティティを用いることを明らかにしています(Nakashima, Isobe, & Ura, 2008; 2012, Nakashima, 2014)。

 

 

◎共感と心理的痛みの伝染 

 前任校の長崎女子短期大学での経験がいきている研究です。保育者養成では、保育者が子どもの存在を受け止め、子どもの心持ちを感じ取ることが重要視されています。しかし、子どものさまざまな心のありように共感することが、結果として保育者自身を苦しめることにつながるかもしれません。具体的には、人とのかかわりの中で傷ついた子どもに対して共感を示すことによって、保育者もまた心に傷を負っている可能性があります。このような心の傷の“連鎖”は実際に存在するのでしょうか。この問いを出発点とした上で、(1)被排斥者に共感を示すことによって、被排斥者の心理的痛みが共感する側の個人に伝染するかどうか、(2)仮に心理的痛みが伝染する場合、その痛みをどのように制御すれば良いのか、そして(3)どのような個人特性を持つ人々が被排斥者の心理的痛みを正確に推測できるのか明らかにするための実験的検討を行っています(中島, 2013; 2014)。

 

 

◎社会的経済的地位と対人関係 

 「Having less, giving more」というタイトルの研究(Piff, Kraus, Côté, Cheng, & Keltner,2010)に出会い、興味を持ったテーマです。社会経済的地位は、人がどの程度の社会的・経済的地位に位置しているかを示すものです。学歴や収入などの客観的指標によって測定されるとともに、階層意識といった主観的指標によっても測定されます。社会経済的地位が低い個人は、自身が有しているさまざまな資源が少ない(と知覚している)にもかかわらず、(経済ゲーム上で)他者に多くの資源を与え、協調的な関係を維持しようとします。さらに、社会経済的地位が低い人々は、相互依存的に生活していかないといけないがゆえに、周りの他者の言動から他者の心的状態を推測することに長けています(Kraus, Côté, & Keltner,2010)。中島が行った研究においても、主観的な階層意識が低い個人の方が信頼ゲームにおいて他者を信頼するだけではなく、排斥された他者の心理的痛みやネガティブ感情を正確に推測できることが示されています。このように、対人関係における個々人の社会経済的地位の影響について明らかにしていきたいと考えています。

 

 

他にも興味・関心のあるテーマがいくつかあります。一緒に語ることでもっと面白いテーマになればと思っています。 ぜひ大学や学会等で声をかけてください。お待ちしています。